ブランコ





―――開始10分後。




―つんつん

突然、右肩をつつかれた。

つつかれた方を見ると、彼方が絶望的な面持ちでこっちを向いていた。


「蒼空…。俺数学1問も解けない…」


見ると、ノートは真っ白。


計算式1つくらいは解けてないとおかしいはずなのに。


思ってたより…危機的状態だな、彼方。


「これも、解けない?」


あたしは比較的的簡単な問題を指差した。

「……習ったっけ?」


真剣に首を傾げる彼方。


うっそ……。


「数学の時間、何してたの?」


あたしは少々呆れ気味にそう問うと、彼方はちっさくなって答えた。


「…寝てました」

「……はぁ」


数学は授業聞かないと分かんないでしょ…。


ブツブツ言いたかったけど、これ以上責めるとなんか可哀相だと思ったので、


「ここはね…」


さっさとやり方を教えてあげることにした。


「ここは、この公式をあてはめるの。それで…」


かれこれ5分以上もかけてやっと1つの問題を説明し終える。


「へ――…スゲェ!そーゆーこと…。蒼空の説明センセーのより分かりやすいわ!」


そう言って顔を小学生みたいに輝かせた。


…話聞いてなかったって言ったくせに。


まじまじと自分が解いた問題を見つめる彼方を見る。


ま……いっか。

本人うれしそうだしね。


そんな彼方を見ていると、別に教えるのも悪くないかなって思えた。