「………え?」
彼方が驚いたようにあたしを凝視しながら目を開き、間の抜けた声を出す。
ん?
「どうかした?」
意味が分からず首を傾げると、彼方はハッと正気に戻って少し焦ったように視線を逸らした。
「いや…なんでもない」
「?…そう」
…何だったんだろ?
不思議に思いながらも、たいして気にもせず立ち上がる。
「それじゃあ、こっち」
そうみんなを催促し、全員が立ち上がったのを確認すると、あたしは自分の部屋へ向かった。
「…部屋、多くない?」
玄関からリビングへと来るときに使ったドアの向かって左側にあるドアを開け、廊下に出たとき。
綺亜羅のそんな声が後ろから聞こえた。
目の前には複数のドアの数。
「あー…ここ一応、二世帯の人達とか5、6人家族用マンションだから」
「そうなの?!」
「うん」
「だからか…。でもなんでまたわざわざこんな広いとこ」
呟くように言う綺亜羅の声に、後ろを振り向かずなるべくなんともないように小さく答る。
「決まってたから、ね」
そう。決まってた。
憎くて、憎くて、たまらないそんなあの人だけど、あたしは反抗できるほど強くなかった。
とゆうか、《反抗する》とゆう言葉さえ思い浮かばなかった。
そういうことはあたしにとって面倒以外の何物でもない。
反抗することに意味はない。
ただただ、あたしは流されるまま言われるままここにきて、何の疑問もなく住み始めた。
それがあたしにとって当たり前の道であるかのように。

