時計の音が部屋に鳴り響く。
何分たったか……。
それまで俯いていた蒼空が顔を上げ、
唐突に
“そこまで深刻な話しじゃないから”
と前置きして小さな、けれども聞き取りやすい声で話し始めた。
「―ー―ー―ー―ー3日前、いつも通りに学校へ行こうと思って、普通に準備してた。そしたら電話がかかってきて、…でもうちにかかってくるのは家庭教師とかしかいないからほっといた」
蒼空が息をつく。
「でも、いつもはすぐ切れるのにその電話は30コール以上したって切れなくて、ちょっとおかしいなって思って、いい加減うるさかったし、でたんだ」
蒼空の声に少し力が入る。
それに気づいたのか、空を眺め話を聞いていた咲斗がチラリと蒼空を見た。
「……そしたら、耳から離してでも聞こえるぐらいの大声でいきなり罵声が聞こえて……。でも、それは聞き覚えのある声で…。内容は全然聞こえなかったけど、最後に“今からそっちにいく”って言われたのだけは聞こえて…」
蒼空の目が揺れる。
いつも以上に色白の肌が電気を点けていない部屋に浮き出て見えた。
「それから何分か経って、チャイムと同時に玄関の扉が開いて」
一瞬ためらってから、蒼空は口を開いた。
「入ってきたのが………ハハオヤだった」
予想のついていた答えだったけれども、それでも、少し震えた。
だって…ハハオヤが来たっていったら…。
「……なにしに…ここに、来たの?」
成瀬が少し声を震わせ、ゆっくりと聞く。
たぶんみんな分かっているだろう。
なにがあったかなんて。
でもそんなこと信じたくないから
憶測なんかじゃ信じることができないから
蒼空に聞くんだ。
つらく、悲しい現実を。

