―ー彼方sideー―
“ありがとう”
そう言った蒼空の雰囲気が少し柔らかくなった気がしたのは俺だけかな。
綺亜羅と言葉を交わす蒼空をみる。
学校じゃないからか、今日の蒼空はよく話す。
綺亜羅……連れてきてよかったな。
一緒にいけっていっくんに言われたときは不安でたまらなかったけど…。
結構あっさり受け入れてくれた。
蒼空も綺亜羅も。
…ま、今からが本番なんだけどさ。
俺は、蒼空と綺亜羅の話の区切りがついたと思うと
「……悪いけど、そろそろ…話し、戻すよ?」
蒼空の肩がピクッと反応する。
チラッと俺を向き、そして
「……………ん」
あきらめたように頷いた。
本当は俺だって無理に聞き出すのは嫌だけど
やっぱり、蒼空のことは知りたいと思うから。
知っとかないといけないと思うから。
無口で無表情な蒼空は、なにかあったって自分からは絶対に話はしないだろう。
だからこそ、
こういう現実があるってこと、
起こり得ること、
蒼空を支えてあげるために
これ以上、
蒼空の傷を増やしていかないために
知っておくべきだと思うから。

