「蒼空チャン。なにが、あったん?」
優しく咲斗が尋ねる。
「……」
「ちょっと待って」
しかし、答えたのは蒼空の声ではなくて
成瀬の声だった。
「うち、ぜっんぜん話についていけないんだけど」
成瀬は“なにがなにやら”、って顔をしながら3人を見回した。
だった…。この人いるの忘れてた…。
「えっとな……」
咲斗が説明をしようとするけど、言葉につまり、助けてほしそうに私を見る。
こればっかりはね…。
でも、説明するのもめんどくさいし…というかそれ以前に思い出したくもないし……。
すると、
「成瀬……」
彼方が口を開いた。
「ここまで無理に連れてきてわるい。もう時間も遅いしさ、後は俺達がいるから、もう帰ってもいいよ」
そう言って“来てくれてありがとな”と微笑んだ。
その言葉に、対する成瀬は
「彼方にお礼言われることじゃないよ。うちも来てよかったって思ってるしさ」
「そうか」
彼方が嬉しそうに笑う。
…ふぅ。
これでなんとか一件落着かな……。
「だからさ、帰んないから」
…え?
成瀬がにっこり笑う。
「男2人のなかに蒼空をおいていけないし、それに…味方は多い方がいいでしょ?」
「それはそうだけど…」
彼方が困ったようにこっちを向く。
あたしの意見が聞きたいのだろう。
話すのはあたしのことだから、それを聞いていいのか聞いてほしくないのか決めるのもあたしじゃなきゃいけないから。
あたしは…あたしはただ、
「好奇心では聞いてほしくない」
それだけは本当に嫌。

