「あっそうだ…。えっと…」
それを見届けた後、何かを思い出したように彼方がカバンをごそごそしはじめた。
「…あった!…これ蒼空が休んでた分のプリント」
「……ん」
差し出されたプリントを受け取る。
…たったこんな数枚のプリントのために
「3人もいらなかったでしょ」
そこにいる2人は、何しに来たかよく分かんないし。
「あー…まぁ一応な。俺と成瀬がいっくんに頼まれたから。でも…咲斗はいらなかったかも(笑)」
チラッと咲斗を見て、彼方は笑う。
別にプリントぐらい学校行ってからでいいと思うけど。
…っていうか
「成瀬って…?」
首をかしげると、今までずっと携帯の画面だけをみていて、喋らなかった女が顔をあげ、こっちを少し警戒するような目でみながら口を開いた。
「うちのこと。成瀬、成瀬 綺亜羅(なるせ きあら)。…先生が彼方1人じゃいろいろ心配だからうちについていけって。うち、副委員長だから…」
「……そうか」
納得して、それからふと思ったことを口に出した。
「……よく、これたね。私の家に」
…絶対、嫌だったはずなのに。
私ができるだけ優しくそう言うと、成瀬はつけまつげをしている目をパチパチとして
「あ……うん。彼方と咲斗がなんか、大丈夫って何度も言うから…。うちもいけるかなー…って……」
と少し戸惑ったように言いながら、彼方と咲斗の方を見た。
私もそれにならって2人に目を向けると、2人共こっちを見てニッと笑った。
…?
なんの笑顔だ…これは…?
…まぁ、いいけど。

