「俺もま、全部知ってるわけやないで?特に蒼空チャンに関してはめっちゃ情報少ないしな。大体が想像やで?」
咲斗は"それでも聞くか?"と俺に言った。
「…咲斗の勘が間違ってたことないじゃん」
信用してる。
俺は咲斗を見た。
咲斗は俺の真意が伝わったのかフッとほほをゆるめた。
「…彼方には負けるなぁ。…分かった、ええよ。教えたる」
咲斗は一旦、目を閉じた。
風が吹き、2人の髪をゆらす。
「蒼空チャンはな、笑わないんとちゃうよ。
……………笑えへんのや。」
………?
「…それって…どういう…」
咲斗が言った言葉の意味がうまく呑み込めず、戸惑う。
「簡単なことや。…言うだけならな。…感情なんてもんは教えられてできるもんやない。そういう場面になれば自然と生まれるもんや」
「…あぁ」
「でも、蒼空チャンは生まれてこんかった。…ということは」
咲斗が言葉を切る。
そして無意識に俺の口が動いた。
「…そういう場面にあわなかった……」
言ってみて、ハッとした。

