「……噂、聞いたよ。てか、女子共に聞かされた」
真剣な声で榊は話し始めた。
と、思ったら、ぷっと吹き出した。
私は驚いて榊を見ると、榊は私の方を見ながらさらに笑いだした。
「ハハハッ!!あの噂、めっちゃウケるわ。あんなバカみてえなの、真面目に信じてるし!」
…笑うってことは……。
「信じて、ないんだ」
おそるおそるそう言うと
「当たり前じゃん。あんなの信じる方がバカじゃん」
そう言ってまた笑いだした。
「…なんで、嘘だと思ったの?」
「あぁ…。雰囲気だよ」
榊は笑いながら即答した。
「俺の兄貴、族やってんだよ。しかも総長。めっちゃ優しいんだけどな。あとその兄貴の友達だったか先輩だったかヤクザがいるんだよ。…だから分かるのな。そういう奴らの雰囲気って」
「……」
「……当たりでしょ」
榊がニヤッと笑う。
私は頷き、意外とまともな考えをしてるんだと榊を見直した。
「でもさ、蒼空はなんで嘘だって言わないの?」
「それは……」
「どうして?」
「……信じると、思う?私が言ったとして」
自嘲気味に、そう吐き捨てた。
「言ったことは、あるの?」
私の態度に怒るでもなく、真剣そうな目で私を見ながら榊はそう言った。
「……聞こうともしない奴らになにいったって無駄でしょ」
私が横目で榊を見ながらそう言うと、榊は一瞬寂しそうな目をしたように見えた。
錯覚……?
榊から目をそらす。
「そっか…」
榊が小さな声でつぶやいた。

