上履きからローファーに履き替え、校門をでる。
うちのクラスは、他のクラスより圧倒的に終わるのが早い。
だからさっさと教室をでると、まず生徒に会うことはほとんどない。
「………!」
そのとき、私は誰かが呼ぶ声が聞こえたような気がした。
「………って!」
「……ちょと待って!」
「ねぇってば!!」
……この声って。
「蒼空ぁーーー!!」
榊だ……。
足を止め、後ろを振り返る。
「ハァ……ハァ…ハァ」
ちょうど榊が私に追いついたところだった。
「蒼空…歩くの速いって…」
榊はひざに手をついて息を整えながらそう言った。
「横見たらいないし…そしたら校門出ていってるとこだったし…。慌てて走ってきて…」
そう言い終わると、ふぅっと息を吐いてゆっくり歩きだした。
なんとなく、後ろからついていく。
「蒼空は家、こっちなの?」
榊は歩調をゆるめ、私の横に並んだ。
「まぁね」
「ふーん。俺んちもこっち」
「……へぇ」
榊は何の用事で私を追いかけてきたんだろう?
何も聞かれる覚えないんだけど……。
そう思いながら、榊が話しだすのを待った。
「んー…どう聞けばいーんだろ」
榊がポケットに突っ込んでいた手を片方ぬいて、頭をかきながらボソボソとつぶやいた。
……はぁ。
ぼやついてる榊に目を向けず私は言った。
「率直に」
すると榊のぼやつきが聞こえなくなった。

