―――…翌日。
「榊くんってさぁ、どこから来たの??」
「榊くんって彼女いる!?」
「榊くん!アド教えて!!」
「榊くんっ…」
………。
朝からずっとこの調子。
登校してきたときはさすがに驚いた。
だって、榊の席の周りには2重にも3重にも女子の輪ができていて、挙げ句の果てには廊下にも他のクラスの女子が……。
朝はもうどうやって自分の席に着くかさえ考えた。
まぁ休み時間を重ねるごとに、さすがに慣れてきたけど…。
それにしても榊ってすごい人気だな…。
私は横にある女子の厚い壁を見つめる。
まぁ、スッゴく整った顔立ちなのは分かるけど。
榊は最初のうちは結構喜んで質問に答えていたみたいだったけれど今は明らかに疲れた様子で「うん」とか「そうだね」とかでしか答えてない。
授業中とかに横目で榊を見ると、心なしか朝からして顔色が悪くなっているようだった。
…そりゃまぁ、こんだけうるさかったらな…。
同情的な視線で女子の壁を眺めていると
「……蒼空ぁ」
偶然開いた女子の壁の隙間から、榊が救いを求めるような声で私を呼んだ。
「………」
私は返事をせず、無言で榊をじっと見た。
周りの女子はさっきまでの騒ぎ声が嘘のように一瞬で静かになる。
それはまぁ榊が私の名前を呼んだからだろう。
「蒼空?」
榊が静かになった女子を見回して、不思議そうな声で私を呼んだ。
そのとき、女子の誰かが口を開いた。

