｢ねぇ、名前なに？｣
｢…あんたは？｣
｢俺ー？さっき前で言ったんだけどなぁ。ま、いーけど。俺は彼方。榊 彼方｣
自分の名前のところだけゆっくりと心に刻み込ませるようにそう言う。
｢……蒼空｣
｢え？｣
｢神崎 蒼空｣
榊は一瞬呑み込めなかったのか首を傾げてから、
｢…ソラって言うんだ。いー名前じゃん。蒼空｣
そう言って笑った。
私はつい、笑ってる榊をじっと見てしまった。
視線に気づいた榊は首を傾げた。
｢なーに？｣
｢……イヤ｣
顔を背ける。
｢そっか。じゃーよろしくな。蒼空｣
｢………｣
どう返事をしようか迷いながらも、一応頷いた。
これが彼方との初めての出会いだった。
この時の私はまだ彼方と出会って自分の未来が大きく変わるなんて思ってもいなかった。
…あんな運命を辿ることも。
