☆ハイローハート

「えっと、あの、3名以上では入れない決まりとなっています」

スタッフはそう言いながらアタシの腕から手をパッと離した
ナルがその間を割って入るように来て「そーゆうことらしいよ」とアタシを少し押しやる

「じゃあ、アタシもとよきと行く」

「なんでよ、俺でいーじゃん」

「だって、とよきやったら最悪おんぶして運んでくれそうやもん!……とよき、待って」

薄情にも、とよきは振り返りもしない
代わりにあこが振り返って、上品に会釈して消えて行った

…………


「どうぞ~」

スタッフに言われて、ナルがアタシの手を取る

引っ張り返して抵抗するも、それ以上の力で引き返されてズルズルとホラーハウスの入り口を入っていった

突然の暗闇に非常口の緑だけが浮かんでいる

ぐにゃっ

「わあ!なんか踏んだ!!」

「踏んだってゆうか、びびらせるために何か置いてんだって」

ナルにそう言われて数回踏んでみると、確かに何か置いてある

少し暗闇に慣れた目がさくさく進んでいくナルの姿をとらえて、急いで追いかけた

「ちょっと待ってよ~、怖くないの??」

「驚かされるだけだって」

「それが怖いんやって」


ナルはアタシに歩調を合わせてくれない


「……ナル、怖い」

「一緒に歩いてほしい?」

アタシとナルの間からギギギ……と音が聞こえてきて、近くにあった棺のふたがずれていく

慌てて逃げようとした時、ガタンと中から血まみれの女の人形が出てきて、ナルに歩み寄るどころか飛びついた

その瞬間ナルの背後から“待て”と声がして、ドラキュラ伯爵らしき人形がこちらに突然振り返り……

更に息を飲んでナルの腕にしがみつく

「かわいい~~~」

テンションの高いナルの声が聞こえたと思った途端、ぎゅーっと抱きしめられた

「ただの人形なのに、そんなこえーの?」

何度もうなずくと、抱きしめる腕の力が強くなる