☆ハイローハート

すれ違う子供に風船をあげながら去っていくピンクうさぎの背中を見送って、満足気にオレンジの風船を握りなおす


「着ぐるみにナンパされてるやつ、はじめてみた」

「あ!理一~、え?ナンパ?」

理一が風船をあごで示す

「違う違う、こけて風船から手を離しちゃった男の子がいたからさ……」

「俺も見てたよ」

「……あっそう」


ハンカチで手を拭きながら出てくるさやかと目が合って、アタシは微笑んだ


「ホラーハウスの前であこ達と待ち合わせしてんねん
じゃ、またね」


二人に手を振ると、アタシは少し早足で歩き出した

アタシの影が風船を揺らしている

キョロキョロとあたりを見渡して、案内板が「ホラーハウス あっち↑」と示す方向に従って進んだ


ホラーハウスの前で待ってくれている3人に駆け寄ると、ナルがこっちを指差して「あーーーっ!!」とさわぐ

……予感的中
絶対ナルに何か言われるってわかってた

「子供の風船横取りしちゃダメだろー」

「ピンクうさぎがア・タ・シにくれたんです」


風船にジャブをするナルごしにホラーハウスの入り口をのぞくと、乗り物らしきモノが見えない

……え?

「ナル……これって、歩くやつ?」

「それ以外に何があんだよ」

「乗り物に乗って自動的に進むやつ」

「そんなの怖くねーじゃん」


あこととよきがサッサと入っていく後ろ姿が見えて、慌てて追う

「待って!一緒にいこ!!人数多い方がいいもん」

ホラーハウスの前に立っているスタッフが“あっ!”とアタシの腕をつかんで邪魔をする

驚いてそちらを見ると、向こうもものすごく驚いた顔をしてアタシをじっと見るから、変な間が生じた