☆ハイローハート

食事のあと、アタシはお手洗いに行った

お手洗い前の広場をよぎっていると、背後から小さい男の子がぶつかってきて、風船がふわふわとアタシの横を通過して空にのぼっていく

慌てて手をのばしたけど手遅れ

あっという間に空をただよっていく青い風船


地面にこけた状態のまま男の子は半泣きで風船を見上げていた

アタシはしゃがみこんで彼を立たせると、服を払う

「大丈夫??」

涙がぽとりと落ちたけれど、男の子は力強くうなずいた


そして再び空を見上げている


「風船、飛んでいってしもたな……」


男の子はぎゅっと腕で涙を拭いた

「強いな、男の子は……また風船もらえたらいいな」

そういうと、突然顔の横からピンクの手がにゅーっと出てきて、ドキリとした

いつのまにかピンクうさぎが横に立って、男の子に風船を差し出している

「あ!風船!!」

男の子は嬉しそうに風船を受け取ると、あっという間に駆け出した

その背中を立ち上がりながら見送ると、少年はお母さんらしき女性に合流して何かを話している
二人がこちらを振り返るとペコリと頭を下げるから、思わず頭を下げた

片手はお母さんと手をつないで、片手に風船を持って……

……まるで何かのCMみたい



パフパフと肩を叩かれる

――ピンクうさぎ


「ナイスタイミングでした、ありがとう」


うさぎにお礼を言うと、アタシにも風船を一個差し出してくれる

「アタシにくれんの?
子供じゃないけど、いいの??」

黒のパンツが脳裏をよぎる

うさぎはこくこくとうなずいて、両手の人差し指と親指でハート型を作るとそれをアタシに渡す仕草をした

「ハハッ、ありがとう」

オレンジの風船をもらうと、うさぎはまたハートを作ってアタシに見せてくれた