両手を震わせながらあこと二人で四人分の食事を運んでいると、一つのテーブル前でMJとちひろが三年生らしき女子達と対峙しているのが見えた


「どした、MJ」

とあこが声をかけると「私たちがこの席を先に取ったのに、この人達が横取りしようとするのよ」と相手から目をそらさずにMJが答えた

両手がぷるぷるして今にも落としてしまいそうだから、アタシがひとまずそのテーブルに食事を置くと先輩方が「はあ?勝手に置くなって」と吠えてくる


他の席も埋まってるし、ここに座るか、他があくのを待つか……


あーあー……もう

なんて思っていると、先輩方のお友達が1人「ねえいつもの席空いてないのォ?」と大声で言いながら近づいてきて、全員がそっちに顔を向けた


……チャコ!!!


チャコはアタシ達の顔を見渡してサッと視線をそらし、眉をピクピク動かしながら言った


「今日はいつも以上に混んでてうるさいし、パン買って教室で食べない?」

「え、でもチャコが学食のラーメン食いたいって言ったんじゃん」

「んーでも、うるさくてうざいし」

「じゃあ別にいいけど??」


と席を取ろうと意気込んでた先輩方は最後にこっちを目つき悪くにらみつけた後、なぜか勝利者のように回れ右して去って行った


あこが笑いながら席にすわって「国坂さまさまだね」なんて言うから、頭の中がハテナマーク


「国坂くん???」


と繰り返すと、MJが先日遭遇したチャコ兄と国坂くんとのひと悶着について教えてくれた


――「そっか……」


アタシは本当にみんなに助けられてるんだな……

「あこもMJも……変なことに巻き込んでごめんな
いつもありがとう……」

MJが「元祖悪い男は理一だし、あこもチャコにケンカ売ったんだから、モロだけが悪いんじゃないわよ」とフォローしてくれるから、微笑んで窓の外に目をやった


学食の窓からは、いつの日か国坂くんがアタシのことを待っててくれた校門が見えて……彼の残像が残ってるようだった