「あこに聞いた
あの日アタシが隣におるかもって気付いてくれたの、国坂くんやって……
しかも、捕まえてくれたんも国坂くんなんでしょ??
ほんまにありがとう」

あこだけ先に帰って、アタシと国坂くんは近くの公園に場所を移動した

「しかも国坂塾って、格闘技の塾やったんやね」

「そうだよ」

「進学塾かと思ってた」

「勘違いしてるかな~ってちょっと思ってたけど
おもしろいから、訂正しなかった」

その言い方がおかしくて、アタシはぷぷっと吹きだした

「体調はどう??」

「アタシはもう、大丈夫」

「アイツは?」

「悪くなったり、良くなったり、悪くなったり」

「……そう」


国坂くんと初めてのデートで一緒に飲んだタピオカ入りジュースは「ジュースに団子が入ってるみたいで、ちょっと……」と嫌そうな顔をしていた

一緒に家に帰って来た時5階の廊下で死にかけのセミがジジジジ言ってて、アタシがビビりまくってると彼があっさりつかんで外に放ってやるから(虫につよいんだ)と頼もしく感じたこと

すっごい真面目な顔して冗談とかいわなそうなのに、実は「マスオさん」の声真似が得意なこと

他にも思い出はいっぱいある


楽しいことばかりで、怒ることも悲しいことも一度もなかった

いつだって笑ってた

大切にしてもらってるって、ものすごくよくわかってた


本気でその気持ちにこたえようと思ってた


それはホントにホントにうそじゃない

だから、何から伝えればいい??


たくさんの言葉が生まれてはパチンとはじけていく


「俺……受験生なんだよ」

先に口を開いたのは国坂くん

それは凛としてどこまでも届きそうなシャンとした声だった

「……うん」