「ん、よし」

理一がパタンと携帯をとじてテーブルに置いた

「なー、なんでいつも一人なの?」

「うーん」

「お母さんは?」

「いるよ」

「お父さんは?」

「いるよ」

「……そうじゃなくて」

理一はアタシがいじっている携帯をスッと取り上げた

「お母さんは?」

「いるってば」

「どこに??」

「うーーーん」

「どこに??」

「……男んとこ」

「お父さんは??」

「外国なんじゃない??」

「なんでしらねーんだよ」

「居場所どころか、顔も知らんもん」

かける言葉を失ったのか、理一が前髪をわしわしかいている

……犬が前足で顔をこすってるみたい

アタシがフフって笑うと、「何がおもしろいんだよ」と怒られてしまった

「アタシのお母さんが妊娠中に、父親らしき外人さんはお国に帰っちゃったんだって」

「お国って……結婚してたんじゃねーの??」

「してないよ、留学生だったって言ってた」

理一が横目でアタシをじっと見ている

「お母さん、若い頃から京都で芸妓してて、その頃に出会ったんだって
でも留学期間が終わると帰っちゃったんでしょ」

「……それはいいとして、で、母親はなんで今は帰ってこねーの?」

「恋多き人だから、家に帰って来るのは男とうまくいってないときだけだよ」