別に合コン断らなくていいのに
たとえ他の女に奪われても、奪い返すのみ
ただし、奪い返す価値があるほどの男ならだけど……


むしろ、他の女に軽々しく気が揺れるなら、のしつけて差し上げよう
男は、星の数ほどいる


そして、アタシは、一人の男にしばりつけられるほど一途でも純情でもない
はっきりいって、男は選びたい放題だ


(だって、アタシは、いい女だから)


われながら、空恐ろしい本心を抱えた女だと思う

そんなアタシを「かわいい」というかわいい男
アタシは横に並ぶ彼の顔を見上げた

脳みそはちょっと足りないけれど、顔はめちゃくちゃ好み

笑った時の目の感じとか、話し方が好き……だから多少のことには目を瞑るの


女子高生の彼女をもっていることを優越に感じていて、その独占欲をたまにチラリと見せる時、アタシの自尊心が高まっていくんだ


利害の一致
それだって、お付き合いをしていく上で重要なわけで……


彼は目的地に到着すると、地下へ続く階段をトントンと先に降りていった

アタシも後を追って、その先にあるドアをくぐった


狭いけれどもステージがあって、音響施設が整っているスタジオ

小さなカウンターと、並べられたグラスが光を反射している


「今度ここであるライブにうちのバンドも参加させてもらうんだ、マスターこんにちは」

彼はそう言って、この店のマスターに軽く手を挙げた

「マスター、結局何組のバンドが参加することになったんすか?」

「キミんとこ入れて5組」

「結構増えたな」

彼はあごに手を添えて何かを考えている
周りを見渡すとアタシ達以外にも音響の確認や、ライブの打ち合わせに来ている人がチラホラといた

ステージに軽く腰掛けて、ギター片手に何か口ずさんでいる男の子と目が合って微笑まれる

……最近ハーフ系に出会う確率高いな

その男の子はハーフのようにきれいな顔をしていて、ロシアンブルーのような髪の色をしていた

すぐにギターに視線を落として、マイクも無しに歌っているんだけど……低くて、時々かすれるような声が聞こえてきて、アタシはじっと見つめてしまった

透き通るような歌声もいいけれど、アタシは少しハスキーな声に弱い