ことが終わると、少しの余韻を楽しんで、俺はさやかの部屋をあとにした


「またバイトの後に電話するね」


と彼女のおでこにキスをすると、俺の肩にこつんと顔をぶつけて「うん」とうなずく姿

人懐っこくて、警戒心もなく甘えきった様子は飼い主に甘える犬みたいで……


手を振ると、暗くなりかけの道を急いだ


完全に心をゆるさず常に警戒心をチラつかせて、ちょっと距離をあけてこちらの様子をうかがう猫みたいな目を思い出して俺は少し笑った


今日、俺……アイツのこと思い出しすぎだと思うんだけど


それもこれも、同じマンションだってのに全く会わないからだ


最後にあったのっていつだっけ

原因は覚えてないけど……なんか、ケンカした気がする


思い出そうとさかのぼってみるけど、高架を走る電車の轟音に邪魔されて集中すらできない


みさきを最後に見たのは5月くらい……かな

試験だバイトだ夏休みだって騒いで、その合間にさやかとデートして、ナルの合コンに付き合って……


あっという間に7月末


まんま二ヶ月も会ってないのか……と思うと、急激に胸が苦しくなるような感覚がしてマンション近くのコンビニに入った


何か手土産でも持ってって、「WOWOW見せて」っつったら入れてくれんだろ

と、安易な考えでアイツがいつも冷蔵庫にストックしていたコーヒーゼリーを二個買うとみさきの家に向かった

5階に到着すると、突然に記憶が戻ってくる


……そうだ、ここで国坂にあって


もう国坂を家にまであげていることにむかついて、話も聞かずにみさきを一人置いて出たんだった……


最近会わねーのって、アイツが国坂と一緒にいるから……かもな

ピンポン鳴らして国坂が出たら俺、どーしよ