☆ハイローハート

理一が脱ぎ散らかした服を手に取った

……帰るんかな……?
『帰って』って言ったしね


モンスター映画のくせに切ない挿入歌が流れて、アタシの孤独感をあおる

次会う約束さえできない関係だから、切なさが増す

バイバイの寂しさをまぎらわす愛の言葉すら交わされない


少し先の二人のヴィジョンを夢見ることすらいけない気がして、理一が玄関を出るとそこで終わりな気がして

アタシは壁にもたれて理一の行動を見つめていた


ジーンズに足を通しながらアタシの方をチラッとみて微笑む理一

アタシも微笑み返して、少し冷たくなった腕を自分でさすった


長く一緒にいればいるほど、思いは大きくなっちゃうから、……これでいいの、と頭の中で繰り返す


「何そんなとこに突っ立ってんだよ、座らねえの?」

「……だって、帰るんでしょ?
理一が帰ったら、アタシもう寝るもん」

「んじゃ、帰る前にちょっとだけ休憩して座ろ」


ジーンズだけ履いてソファーに座った理一

アタシはその背中をみただけで泣きそうになってくる


いつまでもアタシが座ろうとしないから、理一が振り返ってソファー越しにアタシを見た

「なんだよ、追い出し作戦?」

って、苦笑いする彼の表情を少しだけ前髪が隠して、アタシの中の不安がもうどうしようもなくやり過ごせないから


……ごめん、今だけ独占させて

弾かれたように壁から背中を離して、理一に抱きついた

ソファーの背もたれ越しだけど、そんなこと構わないの


「何、帰って欲しくなくなった?」

「もう……早く帰れ……」

「そう言われるとなんでか帰りたくなくなるんだよな
……泊まってもいい??」


アタシはいっぱいいっぱい理一に体をくっつけて何度もうなずいた