「めっちゃしらけた、モロ、MJかえろー」

あこがカバンを持ってサッサとテーブルを片付けると階段を降りていった

とよきは、立ち上がるタイミングすら与えてもらえずあっけに取られている

並んで歩くアタシにMJは一枚の折りたたんだ紙を見せた

「さっき、二人の姓名判断をする時、興味深いのでついでに見させてもらったわ」

開くと、理一が書いた二人分の名前の下にアタシの名前が追加されている

……そう、さっきチラッとアタシの名前が見えたから不思議だったんだよね

そしてよくよくみると、更にそこには“花谷あこ”も書き加えられていた


アタシとMJがこそこそ話しているから、とよきとナルはアタシにも話しかけることができずに文字通りの“置き去り”状態


店を出ると、あこが「なになに?」と顔を寄せてくる

二人でMJをはさみながら駅に向かった

「彼は、誰にでも合わせて上手に表面上の付き合いを続けるの
たまに息が詰まるはずよ
こうゆう男が必要とするのは、どんな自分でも受け入れてくれる女
そこに恋心が存在してもしなくても、居心地がよくてついつい寄り付いてしまう」

「どうゆう意味?」

「身近にそういう存在がいるのに、彼は気付いてない」

あこがアタシの顔を見る

え、まさか

あこは「はい!わかった!」とアタシとMJの前に一歩飛び出した

「どんな理一でも受け入れてくれる女って……」

あこはビシッとアタシを指差す

その指先を見て(ええ~~~)なんて思っていると、横からもう一本指先が伸びてきた

横を見ると、MJは微笑んでアタシとあこを指差している

「え?アタシも?」

あこがめちゃくちゃイヤそうに顔を歪める


「残念ながら、彼は蜘蛛の毒にやられて、当分そのことには気付かないけれど」


あこが地団太を踏みながら「ヤダ、絶対アイツの面倒なんか見ない!」と言っているのがおかしくて、MJの言葉は聞こえてなかった