仕事中ずっと彼のことが気になるようになった。


彼の姿を目で追うようになった。


彼の姿がないと、すぐに彼の姿を探してしまうようになった。



『実久ちゃんおはよう。今日も可愛いな』



彼は毎日出勤すると必ずそう言って、明るい笑顔を見せてくれた。



私はそんなことを言われることが初めてで、嬉しさと恥ずかしさで少し強がって、



『ありがとうございます』



と、何でもないように受け取った態度を見せて言っていた。


その言葉に彼は笑った。



そんなやり取りの毎日が楽しくなった。


彼がいるだけで仕事に行くことが楽しくなった。



『実久ちゃん、送ってあげる』



毎日のように車で送ってくれ、毎日のように食事にも行った。



『星見に行こか』



食事をした後に彼に言われ、連れて行ってもらった場所。



空には小さな星。



『ちょっと見えづらいけど、光ってるの分かる?』



と、彼。



『うん、分かる』



私が見つめていた空から目を下ろし彼を見て言うと、


彼は私をギュッと抱きしめて来た。


心臓の鼓動が早まる。



『ね、キスしていい?』



その言葉に私は何も言葉が出ず、ただ黙ってうろたえた。



『いい?するで』



そう言うと彼は私の唇に優しくキスをした。


温かい。


私が照れて下を向き何も言えないでいると、私の両手を握って、



『どうしたん?実久ちゃんってウブなんやな』



と言って、何だか嬉しそうに笑った。



私は心の中で、『ウブって』と、彼のその言葉にちょっと笑った。



『実久ちゃんとキス出来て嬉しい。俺も男やからさ』



そう言って彼は、今度はもう一度ゆっくりと唇を重ねて来た。



そう。ここから。この時から。


私たちの、私の、これからが始まった。