私は様子を伺うかのように、チラリと浩の方に視線を送った。



浩はその視線にすぐに気付き、




『ん?』




と、何もなかったかのように私を優しく見つめた。




私はただ首を横に振り、むりやりに笑顔を作った。





『泣きそうな顔で笑ってる』




浩が少し眉を下げ、困ったように笑いながら言った。




私は何も言葉を出すことが出来ず、小さく首をかしげてうなだれた。




タバコの火を消すと、浩は両手を大きく広げた。




私は浩のその腕の中に入って、




『ゴメンね』




と、自分でも驚くほどの小さな声で謝った。




『謝ることなんか何もないやん。俺は実久と一緒にいられるだけで嬉しいんやで』




そう言って強く抱きしめてくれた。



浩のその言葉が、涙が出るぐらいに嬉しかった。




『実久、出会ってくれてありがとう』




私も力強く浩の体を抱きしめ返した。




初めて本気で人を好きだと思った。




人をこんなにも愛おしいと思った。