夜の高速道路。



流れる夜の景色を見るのが好き。



そんな流れる景色の横にいるのは、大好きな浩。



幸せ。




幸せっていうのはきっと、こういう小さなことの積み重ね。



そう思えるぐらいに幸せで、私が落ち着ける場所が浩なんだ。



楽に呼吸が出来る人。




『実久、大丈夫?車しんどくないか?』



『うん、大丈夫』



『ん。しんどくなったら、ちゃんと言うんやで』



『分かった』




浩のこういうところも好きだ。



優しく私を気遣かってくれる。



私に愛されているんだという気持ちを与えてくれる。



例えそれが、私だけに向けられたものじゃなくて。



誰にでも普通に、そういう優しさを与えられる人なだけなんだとしても。



今、この瞬間はきっと、私だけのものなんだ。




『もうすぐ着くで。俺の地元』



浩がなんだか楽しそうに、明るい声で言った。



『あ、アレいつも行く店』



指を差して、いつも行く色んな場所を一つ一つ嬉しそうに教えてくれた。



そして、




『このマンション、俺ん家』




浩が住む家。



浩と.....家族が住む家。


胸の中がちょっとモヤモヤした。



『何食べよー。あ、俺ん家で弁当でも買って食べる?』



もちろん冗談のつもりで浩は言っている。



私ももちろん冗談だと分かって聞いている。




だけど、もし私が、



『いいよ』



そう答えたら、浩は何て言葉を返すんだろう。



ふとそんな考えが頭を過ぎった。



もちろん言わない。



ううん、言えない。



私はただ笑って、『えー』とだけ答えた。



『うそうそ。ちゃんと美味しいものをごちそうするやん』



浩はそう言って、ビルの中の駐車場へと車を入れた。