秘密。



誰にも秘密。



秘密の恋。



そういう「秘密」という関係が。




言葉が。



ドキドキして楽しかっただけなんだ、きっと。



......彼は。



そう。



今思えばただそれだけで、



私じゃなくても良かったんだ。





『ん?』



私と目が合ったとき浩は、どうした?という顔でこっちを見る。



私が何もないよっていう言葉の代わりに、ゆっくり首を横に振ると、



浩は決まっていつも、




『ん。好きやで』




と、少し真顔で、少し笑って、私の瞳を見つめる。




そんなとき私は、嬉しくて、ちょっと照れて。



どう反応していいのか分からなくて、いつも下を向いて微笑む。




『そういうところも可愛い。実久って照れ屋よな』




浩は私が照れて赤くなると、いつも嬉しそうに笑ってそう言った。




そんな浩の言葉に、笑顔に、私は全身で溺れた。




『今日は仕事の終わり時間早いし、俺の地元までご飯食べに行ってみる?』



『うん、行きたい』




浩の地元は職場から車で一時間と少しかかる場所。



毎日そんな距離を通勤しているのにも関わらず、



浩は私と毎日でも会いたいと言って、毎日のように夜デートをしてくれた。



帰るのは朝方。



そしてまたそのまま少し寝て、職場へと向かってくれていた。



そんな浩の行動が、



「本気で好きでいてくれているんだ」



そう私を勘違いさせたんだ。



優しいけど、冷たい人。



大好きで、大嫌い。