君が愛した教室


すると吉原先生は「これから部活の顧問だから」って背中を向けた。

あぁ、幸せな時間ももう終わりか。
幸せな時間ほど、あっという間に感じるのは本当だね。
部活に向かう愛しい人の背中をじっと見つめた。
せめて、先生が職員室を出て行くまでは…その大きな背中を見つめていたかった。


………え?

じっと見つめる私を吉原先生はもう一度振り返って確認した後、満面の笑顔を見せた。

「まあ、ゆっくり考えな。心配しなくてもちゃんと俺がサポートしてやるからさ。」

「は……、はいっっ!!」

嬉しくて自分が思ってた以上に大きな声で即答した。
あまりにも大声で、周りの先生たちが私に注目したけど、私には吉原先生しか映っていなかった。

「じゃ、気をつけて帰れよ。」

吉原先生はそう言い残して、職員室を出て行った。

今まで窓の向こう側にしかいなかった存在が、
急に手の届く距離まで近付いた気がした。