君が愛した教室


「そうだけど…君は夏の物理の補習受けてなかったよね?」

言われて思い出した。
夏休み中に理系に進みたい人を対象に補習を行ってた。
あれ吉原先生がやってたんだ。
なんで試しでも行かなかったんだろう。私のバカッ。

「受けてないと…ダメですか?」

「物理結構進んじゃったからなあ。二年はもうそこ復習とかなしで次に進めるつもりだし…。」

そんなあ…。
一度も受けたことのない吉原先生の授業。一回くらい受けたかったなあ。

極端に気を落とす私を気遣ってくれたのか、吉原先生は続けて言った。

「でもまあ、どうしてもって言うなら主任に聞いてみれば?」

今すぐ返答はなしか。
でも、待って。もしかしたら去年以降同じケースがあったかもしれない。その時は…?

「去年とかはどうだったんですか?」

そう質問すると、吉原先生は苦笑気味で頭を触りながら言った。

「去年って…俺今年からの新任だからわかんねぇや。」

吉原先生って、新任だったの!?
それで思わず聞いてしまった。

「先生って何歳ですか?」

話の流れからしてもこの質問っておかしいよね。
でも、気になっちゃうとどうしてもほっとけないんだもん。
ちょっとくらい…いいよね?

「俺?えぇと…29歳かな。もうすぐ30だけどね。」

「誕生日は?」

「それは……秘密。」

さすがにここまではダメか。
吉原先生は「秘密」って言うのと同時におどけた笑顔を見せた。
先生……そんなの反則だよ。
可愛いすぎるもん。