君が愛した教室


先生との授業はあっという間で、1時間なんか10分もないような感覚だった。

「じゃ、また明日も特訓するぞ!」

先生はやる気満々に拳を出して言ってた。
なんか、そんな軽いジェスチャーが子供みたいで可愛く思えた。


大人に可愛いなんて…おかしいかな?


「先生?」

先生が職員室に帰ってしまう前に、用もないのについ呼び止めてしまった。
ただの私の欲望。
少しでも長く、先生と一緒にいたかったんだ。

「ここの教室って、誰か他に使うんですか?」

「いや……まあこんな小教室だし。日差しもないし。今ん所俺とお前だけの教室だな。」

"俺とお前だけ"って響きに、少しキュンとした。


最初に会った時私は『君』だったのに。



「じゃあ、ここは新しい人が来るまで…先生と私の秘密基地だね。」

あ………
言ってしまった。

しかも、敬語を忘れてた。
今まで目上の人に敬語を忘れたことなんてなかったのに。

先生は、どんどん私を変えていっちゃうんだもの。

魔法使いだからね(笑)



そんな先生は、私の言葉に何の疑いもかけないでいてくれた。

そして、私をじっと見つめて答えた。

「そうだな……特別な場所にしよう。」





私はその言葉をあまり深くは受け取らなかった。

それよりも、気になってしまった事があったから。



先生はどこか、切なげな顔をしていた。


私には、その理由がわからなかった