君が愛した教室


「長谷川、立って。」

高鳴り続けてた鼓動が一気にドクンと止まった。

初めて先生に名前呼ばれたのと、この空気に耐えられなくて。


でも、私には先生の言う通りにすることしか出来なかった。


「ゆっくり、俺に向かって歩いて。」

一歩、一歩ゆっくりと歩いた。
先生がまた一歩と近くなる度に、鼓動はさっきより大きな音でドクンと鳴った。

「止まって。」

優しい先生の声で、私も止まった。

同時になんだか、急に怖くなった。

あんなに好きだった先生が目の前にいるんだよ?
なのに…どうして?


違う……
こんなの先生じゃ…!





そう思った瞬間だった。





「長谷川?俺の話聞いてた?」

「…………ほぇ?」

先生の話?って、ゆっくり歩けだとか、止まれだとか……

「いやだから、これが属にいう相対速度ってやつ。」

「相対…速度?」

「そう。俺は止まってるのに、お前から見たら近付いて見えたろ?まあ、相対的って感じの説明の方が近いのかな。」

「あ………授業の話。」

「そうだけど…俺なんか変だったか?」

「いえっ!!何も。」

なんだ、なんだ。
変なのは私の方じゃん。
何想像しちゃってたんだろ。恥ずかしい…!

一気に顔が赤くなるのが自分でもわかった。


「お前……面白い奴。」

「へっ?何か?」

「いーや、何でもない。」


先生は私が顔赤いのわざと知らないフリしてくれたのかな。
だったら余計恥ずかしいよっ。

もう………私のバカバカバカッ!!


「授業は集中して聞くように。」

そうやって吉原先生は意味深に笑った。

もう……先生もいじわるっ!!