次の日の放課後から、私と吉原先生の物理特訓が始まった。

普通の教室の二分の一くらいにしか満たない小教室。
そこがちょうど隣の建物の陰に当たるからか、どこか薄暗い様に感じるのは私の弱い気持ちの問題かな。

初めて入る教室に戸惑いながら行ったけど、そこの黒板の前に立っている人を見ると、それが嘘みたいに消えた。


ついずっと見とれていると、吉原先生は不思議そうに

「どした?…早く座れ?」

って私に話し掛けた。

やっと我に帰って、恥ずかしくて顔が真っ赤になりながら椅子に早足で座った。

もう…せっかく先生の初めての授業なのにっ。

緊張してる私に、先生は近付いて来て私の机の目の前に立った。

そして、一言。

「分厚い本。」

そう私が買った参考書に触れて、笑った。

吉原先生の笑顔は自然と私の緊張を解いた。
これじゃまるで、魔法使いだ。

そう思って、我ながら笑った。