私は、吉原先生の案内のもと指導室に入り全てを話した。


文系か理系か迷っていること。

物理に少し興味があること。

志望校もまだ定まってないこと。



先生が気になることは、もちろん言ってない。
そんなの馬鹿な私にでもわかるよ。
想いを伝えた所で、困らせちゃうだけだってことくらい。

私の恋は、永遠の片想いだってことくらい...



「そっか…。そういえば君、前も物理がどうとかって話してたよね?」

「あっ…はい。」

覚えてくれてたんだ。
私という存在が吉原先生の片隅にでもいるんだってことが、嬉しかった。

「俺はさ、高校入る前から教師になるんだって決めてたから…悩む君を完全には理解してあげられないけど。でも、そんな深く悩む必要もないんじゃないか?」

「でも、周りは皆もう決めてるのに、私だけ何も前に進めなくて…それで。」

「だから、何?なんか周りと合わせなきゃいけない理由あんの?」

少し強めな口調に戸惑ってしまった。
もしかして…怒ってる?
そんな私に構わず、先生は話を続けた。

「それぞれの道があるように、それぞれのペースだってある。無理についていこうとして失敗する方がバカみたいだろ?

それに、君の道を他人に求めてどうするの?小さい子供は転んでもすぐに手を差し延べて立たせてあげる。でも、ずっとそれをする訳じゃないだろ。もし転んで、救いを求められても俺は無視するね。だって、もう自分で立てるだろって。いつまでも甘えてられないだろって。

だったら、お前はどうだ?もうそんな子供じゃないだろ?ゆっくりでもいいからさ、自分で殻を破っていかなきゃ。お前の人生は、お前のものでしかないんだから。」

先生は、いつもニコニコしてるだけじゃなくて…本当はとても、とても熱い人だった。
それは説教とはいえない、先生の生徒を思う気持ち。メッセージだった。

「ま、それでも迷ったら……」

そう続けて先生はどこか恥ずかしさも交えた自信の笑顔で言った。



「俺達教師がいるのさ。」




つられて私も笑顔になった。


そっか…
私はずっと先生に答えを問い掛けていた。

でも、間違ってた。

答えは、こんなに近くにあったんだね。