君が愛した教室


「どうした?元気ないな?」

困っている生徒はほっとけない吉原先生だから。
泣きそうな顔の私を見てすぐ声をかけてくれた。
でもそんな優しさが、今の私には辛かったんだ。


今すぐにでも泣きたいのに……先生の前じゃ泣けないよ…


「大丈夫です。」

そう無理に笑顔を作って言った。
すぐ立ち去るつもりだった。
なのに……


「『大丈夫』って顔してないけど。」

そう言ってすぐ私の行く道を塞いだ。
嫌…そんな真剣な顔で見つめないで。
いつもみたいに…笑ってください。
笑って、『そっか。』って言うだけでいいから。
それだけでいいのに。

「何でもないです。」

「何でもないと、余計気になるんですが。」

「別に………」

「気になる…!」

「本当に大丈夫ですから。」

「き〜に〜な〜る〜!!!」


…………フフッ
先生の駄々をコネる子供みたいな反応に思わず笑ってしまった。

「あ…話す気になってくれた?」

吉原先生はいつもの笑顔で、私を見つめた。