唇が離れたときに、わたしはいった。 「今から……わたしを抱いてよ、俊正……」 「…………ん……」 今だけは、あなたはわたしのもの。 それ以外はわたしのものじゃないけれど。 それでもいいの。 あなたが裏切り者でも、今だけはわたしだけを見ていてくれるでしょ? わたしの左の薬指にぴったりの、イチゴの指輪が虚しく光った。 【完】