上手く噛み合わぬ歯を鳴らしながら、芹は記憶を辿る。

この自衛隊員、昨夜高速道路でトラックに乗せてくれた彼ではないだろうか。

二十代後半のまだ若い自衛隊員。

実直そうな顔立ちが、芹の印象に残っていた。

「…もしかして君は、昨夜のあの高校生三人組の一人か」

自衛隊員の方も、芹を覚えていたようだ。

返り血を浴びた酷い有り様の彼女でも、何とか昨日の芹と同一人物だと認識してくれたらしい。

「他の二人はどうした?一緒に行動していたんじゃないのか?どうして君一人だけゾンビに襲われていた? 」

矢継ぎ早に質問を繰り出す自衛隊員。

だが屍の群れの襲撃による戦慄の残る今、芹は満足に受け答える事ができなかった。