それは突然の事だった。

早朝。

「起きろ、起きろ要!」

前日の逃避行で疲弊しきっていた要は、寝室でグッスリと寝入っていた所を紅に起こされる。

「ん…」

何しろヤクザの組長の屋敷だ。

何の心配もなく安眠できると思っていた要は、油断して無防備に布団の中で寝返りを打つ。

緊急事態が起きているとも知らずに。

「目を覚ませ要!大変なんだ!」

布団から顔を出そうとしない要の体を揺さぶって、紅は大声を張り上げた。

「来生がいない!」