窓が割れ、ガラス片が散乱している店内に足を踏み入れる。

ライフラインはまだ辛うじて生きているのだろうか。

灯りも冷蔵庫も、電子レンジも使える状態だった。

「申し訳ないけど、勝手に頂くしかないわね。ほら、要も好きなの選んで。あっためてきてあげる」

芹が弁当のコーナーで適当に見繕いながら言う。

「……」

要はそんな芹の態度に少し戸惑っている。

「な、なぁ来生…」

「『芹』って呼んでよ」

人数分の弁当を抱えて、芹が要の顔を見る。

普段のクラス委員の顔ではない、歳相応の少女としての、柔らかな微笑みを浮かべた愛らしい表情だった。