軽トラはゾンビを撥ねながら、車道を全速力で走る。

車の走行スピードに追いつけるほど、ゾンビの足は速くない。

とりあえずはもう安心だろう。

…身の安全が確保されたのを確認して。

「要っ!」

芹は要の胸に飛び込んだ。

「おっ、おい…」

下の名前で呼び捨て、しかも抱きついてきた。

優等生で堅物の芹らしからぬ行動に、要はうろたえる。

「来生…どうしたんだよ…」

「『芹』でいいよ」

安心から涙をこぼしながらも、芹は顔を上げて微笑みながら彼を見上げる。

…自分の危機に駆けつけてくれた。

身を張って命を救ってくれた。

芹の要に対する感情は、信頼から好意、好意から恋愛感情へと変わっていた。