「絶望的だが現状をハッキリと言うぞ」

紅が要と芹の顔を見た。

「葺山市はこのまま壊滅するだろう。相沢や来生にも、勿論私にも家族はいるが…もう会えないと思っておけ」

「な、どういう意味よ!」

芹が噛み付く。

「そのままの意味だ…この混乱では散り散りになって逃げるのが精一杯だ。安否を確認する手段など現状ではない。それに逃げているならまだいいが…」

紅はそれ以上は口にしなかった。

ゾンビのあの数、あの感染力の強さ。

僅かに噛まれただけでもゾンビ化は免れない。

逃げ延びるのは至難の業と言えた。