「圭矢!?」
「うおっ」
抱きしめられてたのを離れるのは嫌だけど。
ガシッと圭矢の顔を両手で掴んで、見上げた。
とても哀しそうな顔をして、でも赤くなった頬。
私と合った視線を下に向け、顔を隠そうとする。
それでも離さない両手。
また、圭矢が視線を上げ、絡まった目を見つめて、
「本当はすっごく嫌!
女優さんとの絡みだって、キスシーンだって。
泣いちゃうくらい嫌!
だけどね?
圭矢の仕事だもん。
仕方ないよね?
だから……我慢する。
ってか我慢してるの。
ただ……たまにでいいから、
こうして抱きしめて?
私が圭矢の1番なんだよ。って教えて?」
優しく、でも哀しい笑顔を向けた圭矢。
「辞めて欲しいって言わないの?」
そんな解りきってるセリフなんて言わないで?
「馬鹿! 言わないから。絶対言わない!
圭矢、仕事好きでしょ?
練習だってイッパイしてるじゃない。
私は、どっちの圭矢も好きだから。
だから言わない……言えないよ?」
「雫……」
力なく笑う圭矢に、
「ファンの子に怒られるよ?
圭矢のファンの子の気持ちナメないでよね?」
そう、これは、ファンとしての言葉。
圭矢の彼女としてじゃなく。
ファンとして。
私だって、圭矢のファンの1人なんだから。

