―ツー、ツー、ツー…
耳に響く嫌な機械音。

「クソッ…本当につながらねぇ…」

真一は携帯で、母親、父親、兄、自宅に電話をかけてみたが、主催者の言った通り繋がらなかった。
何度しても、誰にしても、結局携帯からは虚しい機械音が聞こえてくるだけだった。

試しにメールをしてみても、一通も送信出来なかった。

「はぁ…」

溜め息をつくと、諦めて携帯をポケットへ仕舞った。


真一と愛は、多少音を立てても外にはバレないだろうと踏んだ結果、防音構造になっている南舎二階の音楽室に隠れた。
「ねぇ…真一」
「…ん?」

それまで真一と同じように家族や友達へ連絡を取ろうとしていた愛も、やはり肩を落とし、携帯を閉じた。

「わたしたち…何でこんなことになっちゃったんだろう…」


明日から夏休み。
来週には遊園地に行き、楽しい夏休みになるはずだった。


「もう…やだ…」

静かに肩を震わせる愛を、真一は黙って抱き締めた。