教室に残っているのは、拓海を除いて、絵里と悠也、桃香だけだった。


「絵里、行こ…」
「悠也!?」

正義感の強い悠也。
光同様、普通なら桃香をほっとくはずがない。


「悠也…でも桃香が……置いてくなんて…」

絵里の訴えに、悠也がいつもより少し低い声で答えた。

「仕方ないだろっ…」

自分も桃香をほっておくなんて、本当はしたくない。
けど、普通の男子高校生の悠也に絵里を守るだけでも大変なのに、桃香までとなると荷が重すぎる。


「俺は、絵里だけでも助かってほしいんだ…」

悔しくて、悔しくて、
目に涙を溜める悠也に、絵里は何も言い返せなかった。


「桃香、ごめんっ…」


これだけ呟いて、2人は教室を後にした。