―ああ、今日は雨が降りそうだな…

あっやばい。俺、傘持ってきてない。

朝の天気予報では曇りだって言ってたし、まぁ大丈夫だろう。
お天気お姉さんを信じよう。ん?ちがうか、予報士か。


まぁどっちでもいいか。
帰るときに雨が降らない事を祈る。


清秀高校二年四組の市村悠也は、窓際前から二番目の自分の席に座り、頬杖をしながら空に浮かぶ黒ずんだ雲を眺めていた。


「…え、ねぇ!ゆーうーやー!悠也ってば!!ちょっと、聞いてる!?」


悠也の一つ前の(他人の)席の椅子を後ろに向け、悠也と向かい合って座っているのは、悠也と同じクラスで、彼女でもある高倉絵里。

少し茶色がかった、胸上くらいまで伸びたセミロングでストレートの髪と、大きく猫目気味な瞳が印象的な、中々の美少女。



「ん?ああ、はいはい。ちゃんと聞いてるよー」

悠也はハッとして空から目を外し、絵里の方を見る。

「うそ!さっきから外ばっか見てるじゃん!も〜!!」

少しふてくされる絵里。


「…あは、バレた?」
「もう、信じらんない。人が話してるのに〜!」
「ごめん…いや、あの…雨降りそうだなって思って」
「雨?ああ、本当だ。でもあたし傘持ってるから大丈夫だよ」
「あ、本当に?」
「うん。もし降ったら入れたげる」
「ありがと、助かる」






―なんてことない日常。
いつも通りの学校生活だった。