夜。
アタシはとにかく家にあるだけの目覚まし時計をセットして、ケータイのアラームもセットして眠りについた。

――ピピピピ…。
『こんなに可愛い子に会ったのは初めてだ…』
――ピピピピ…。
『好きだよ。僕と…』
――ピピピピピピピピピピ…。
「唯!うるさいから全部止めなさい!」
お母さんに言われてアタシはしぶしぶと起きた。
「ったく、どうしてこんなに目覚ましが…」
そう思ったのもつかの間。
「っああああ!」
「唯!うるさい!」
そうだ!亘理聖夜を迎えに行かないと!
今何時?!
時計を見ると7時半。
「ちょっとやばい…」
そう思ってアタシは食パンを持って家を出た。

「はあっ、はぁ」
結構通学路から外れるな、沙希ちゃん家。
でも、食パン持って(決してくわえてはいない)るアタシって、なんかヒロインみたいじゃない?!
そんなこんなで走りながら妄想をしていたらあっという間に沙希ちゃん家前。
時間は…。
「7時45分。よしっ、大丈夫」
ピンポーン。
チャイムを鳴らして1番最初に出てきたのは…。
「遅っせぇんだよハゲ!またギリで学校着きたいのかよ!」
怒った亘理聖夜がそこにいた。
「…まだ45分」
「もうだろうが!…午前ティーは明日でいいから!はやく歩け」
そういって亘理聖夜はスタスタと歩いていった。
「ちょ…ちょっと待ってよ」
「待ってくださいだろうが、後輩」
意外と厳しい。
「待ってください」
「やだ」
なっ!
言わせておいて…。
こいつ、そうとうSだな。
「明日からは30分には来いよ?そしたら早歩きしなくても8時10分までには着くから」
そう言って亘理聖夜はまたスタスタと歩いていった。
「だから待って!…ください~!」