「ちょっと!チカ!!」

 声が聞こえたかと思うと女の子が後ろからチカの肩を叩いた。

 「水臭いじゃない!彼氏いるなんて全然聞いてないよ!」


 え?彼氏ぃ!?俺が?


 突拍子もない事を言われ唖然としてしまった。


 周りを見渡すと他にも数人こっちを見てニヤニヤしている。

 どうやらチカのバイト仲間らしい。


 「え~っ、そう見える?」

 チカは笑いながら曖昧な返事をしている。

 …おい、そこは否定してくれよ。


 「いや、そういうのじゃないから。」

 慌てて否定したが、

 「またまた~、照れちゃって~♪」

 バイト仲間の女の子は俺の言葉を軽くあしらった。


 「バイト終わるまで待ってくれるってやさしい彼氏だね。」


 駄目だ、周りも完全に彼氏という目で俺を見ている。


 「そんなんじゃ無いってば~。」

 チカは相変わらず笑いながら曖昧な態度をとっている。


 「チカをお願いしますね。」

 女の子は俺に声をかけるとそのまま去ってしまった。


 結局、女の子含めバイト仲間に最後まで誤解を解くことは出来なかった。