水曜日の彼女


 俺は慌てて自動ドアを見たが既に彼女の姿はなかった。


 「くそっっ!」


 俺はカウンターに掛けてある傘を掴むとバイト仲間に

 「店番頼むっ!」

 と、言って店から飛び出した。


 店から出て辺りを見渡すと駅の方へ歩いて行く彼女の後ろ姿が見えた。


 「もうあんな所まで歩いているのかよっ。」


 俺は無我夢中で彼女を追いかけた。


 「お客さん!」

 呼んでも彼女は気付かない。


 「お客さんっっ!!」

 俺は必死で叫んだ。白い息が一緒に出る。


 ようやく彼女は立ち止まり振り向いた。

 俺が迫ってくるのに驚いて目を丸くしている。だか、俺が傘を手にしてるのに気付き理解したようだ。


 俺はやっと追い付き、立ち止まった。傘を持ったまま膝に手をつき息を調える。