━━2年前━━

私の中学校には天才とうたわれた一人の少年がいた。

そう。
私の好きな人だった。

彼は高校生になるのも待たずに、世界に飛び立つことが決まった。

いつ帰ってくるかもわからない長い旅。

彼は笑ったんだ。

「次、里奈に会う時は世界一とってくるから!」

そんな大それた夢…
いつ叶うかもわからないじゃない

心の中でそう叫んだくせに私の口は嘘と笑みをこぼした。

「きっとできるよ。がんばれ!」

彼の嬉しそうに笑った。

「帰ってきたら一番に里奈に会いに行くよ。そんで告白するから」

「………え?」

彼の言葉の意味がすぐには理解できなかった。

でも彼が照れ臭そうに私の頭を乱雑にかき回したことでやっと理解した。

「…うん!」

嬉しかった。

悲しい悲しいこの時にあった唯一の幸せだった。

私と彼は最後の思い出に地元の七夕まつりの笹の葉に短冊を付けた。

私は彼の好きな青い短冊に“大切な人の願いが叶いますように”と書いて、私の手が届くかぎりの高い場所に結び付けた。

彼は私の好きな黄色の短冊に願い事を書いた。

「なんて書いたの?」

「願い事は口にしたら叶わないって言うだろ?」

と言って彼は一番高い笹の葉に短冊を結び付けていた。