大江戸恋愛記


凛side



そしてババァと女を乗せて森の中にある一軒家へと向かった。




『…おい凛』

『あ?んだよ』

『紫苑と、知り合いか?』

『……んなんじゃねーよ』



知り合いなんかじゃない。ついさっか会ったばかりの他人だ。


でも俺は何で人間の女、それも見ず知らずの奴を助けておまけに背に乗せてるんだろう、と考えたけど家が見えたからやめた。








そしてババァと女を家に降ろして、俺はまたあの大木へと向かった。


ここは人間も来ねぇし、静かだし、落ち着く。

特にこの大木はすっげぇ落ち着くんだ。なんか、暖かけぇ。



俺はいつもの木の上に上り、心地よさにいつの間にか眠っていた。













『―……ん』



俺が目を覚ました頃には辺りはもう暗くなり始めていた。


まだ覚醒しきっていない頭のまま体を起こすと、盛大に腹が鳴った。



『…腹、減った』




俺は木から飛び降り、家へと駆け出した。















…何でこうなんだよ。



何か機嫌が良かったから久しぶりに扉をぶち壊して入っちまったら、あの女がいて思いっきり怒鳴られた。



しまいには俺のことを馬鹿男呼ばわりまでしてきやがった。

何で俺が人間の女に説教なんかされねぇといけねぇんだよ。



でも、女の言ったことに何故か反論は出来なくて、苦し紛れに舌打ちだけして家を出てきてやった。




腹立つ。あのクソ女。


俺はもやもやする気持ちを落ち着かせるために再び大木へと向かった。






また木の上に飛び乗って、頭の後ろで手を組んで寝転がる。



グキュルルル……



『……飯、食いに行ったのによ』





反論が出来なかったのは、女に腹立ちながらも言ってることが正しいと思ったから。


俺だってわざわざあんなことを言うために行ったんじゃない。

こんなことになるつもりはなかった。