「……」


過去が明らかになってきて、私は何とも言えない気持ちになっていた。

そんな…そんなことがあったなんて。



「それで村の者達は、母上が一人のところを一気に襲いかかったのじゃ。卑怯だろう、大勢でかかれば殺せると思ったんだろうな」

「…でも、お母さんは妖怪だったんでしょう?逃げることは簡単だったんじゃ…」

「…それがな、凛の母上は逃げずに呆気なく捕らわれたのじゃ。その真意はよく分からない」


梅ばぁちゃんは視線を落として弱々しく言葉を紡いだ。


「…きっと、楽にしてやりたかったのだろうな、凛を。妖怪の自分が死ねば、凛は少しでも人間達から迫害されずに済むかもしれないと思ったんだろう。人間より優しい心の持ち主だった」


涙が出そうになった。

同情とかそんなんじゃなくて、ただ悲しかった。


「そして捕らわれた母上は……村の人間達によって凛の前で殺された」

「……!」

「父上はその事件を機に気を病んでしまって、数十年前に亡くなってしまった」



「そ、んなことって……」


あまりにも辛くて、私は顔を伏せた。

話を聞いただけでこんなにも辛いのだから、幼かったあの人はどんなに辛かっただろうか。



「…でな、その父上、というのは実はわしの息子だったんじゃ」


「…え」

「だから凛はわしの孫なんじゃよ。驚いただろう?」


お、驚いたもなにも…
孫だったんだ…。



「息子が死んでからはわしが凛を預かり、村からも出て今はこの森の中に家を建ててほそぼそと暮らしておる」


そう言った梅ばぁちゃんの表情は悲しいとも言えぬ分からない表情をしていた。