「俺を知らないのか?」

「は?」


何だこの人…
俺を知らないって、何というナルシスト発言…。

まぁこのくらい美形なら、そう思っても仕方ないのかもしれないけど。


「おい」

「あ…はい、知らないですね」


それでも私は、何かムカついて(決して僻みではない)淡々と答えた。


すると美形さんは目を見開いて驚いた顔をしていた。どうしたんだろう。


「……テメェ何者だ?見るからに人間だが、俺を知らない人間はいねぇ」

「いや…知るも何も、あなたと私会ったことないですし」


相手の言葉に苦笑いして返せば、ポカーンとして立ちすくしていた。

何だ。何なんだ一体。


「…ていうか私聞きたいことが沢山……っ」

「コラァ凛(りん)ー!!こんなところにいたのか!!」

「げっ…ババア…!」

「あ、ちょっと…!」


向こうから大きな声が聞こえたと思ったら、美形さんはおもむろに嫌な顔をして物凄い速さで何処かへ行ってしまった。


ちょ、ちょっと速すぎやしませんか…?


「はぁ、はぁ…凛の奴め、逃げおってからに…!」

「あ…」


ぜぇはぁと私の隣で息を吐く、少しふくよかなおばあさん。


あの美形さんの知り合いなのか?