「わー、雨に降られちゃったぁ!」


咲斗とランチを終え、本来の予定ではなかった映画をみた後帰宅すると、玄関先にヨウの靴があったからまだ家で待っててくれたんだなと胸が痛んだ。

(本当はもう少し早く帰るって伝えてたから、機嫌損ねてるかな?)


何の返事も姿も見せないヨウにそんなことを考える。

映画館を出た後、振り出していた雨にカフェにでも入って雨宿りをしないかという咲斗の誘いを断って、雨に打たれながらも走って帰って来た。



「よーうー?」


風呂場のタオルを取って、髪の毛を拭きながら部屋に入るとこんもりと膨れ上がったベッドにすぐさま目がいった。




「ヨウ?寝てるの?」



そう言って静かに近付いていくと、布団がピクリとした反応を見せた。




「ヨウ?帰ったよ?」



どうしたものかと掛布団強引にめくると、膨れっ面で目に涙を浮かべたヨウを見つけた。



「え!?ど、どうしたの?」


ぷいっと顔を伏せて丸まって行くヨウに唖然とした。
一体出かけている間に何があったんだろう。
やっぱり帰りが遅かったのが原因なんだろうか。


(でもそれって泣くほど!?)


予想だにしなかった状況(ある程度起こっているとは思っていたが)にオロオロしながらも言葉を続ける。


「ヨウ?遅くなってごめんね、ただいま」


そう言って、普段はしないけど少しでも機嫌が治ればと、体を折り曲げヨウの頬にキスをすると
身を固くして更に不機嫌になった気がした。